WEBでちょい旅 一厘録 ICHIRINROKU

「ばっぱ」食器(宮城県×新潟県×石川県)2013.10.16 /zakka

NHKの朝ドラ「あまちゃん」で宮本信子さん演じる天野 夏はみんなから「夏ばっぱ」と呼ばれていた。「ばっぱ」は「おばあさん」を表す方言だ。ドラマの舞台は岩手県だが、「ばっぱ」は東北地方のほかの地域でも使われている。東日本大震災の津波による犠牲者が最も多かった宮城県の石巻にも、「負げねど(負けないぞ)」と立ち上がった「ばっぱ」たちがいた。

人との出会いが広げる支援の輪

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宮城県・石巻漁港の市場から1kmほど内陸にある鹿妻(かづま)地区。海とともに生きてきたこの地域は、東日本大震災によって甚大な被害を受けた。家や家族など大切なものを失った悲しみと思うように進まない復興に、昔から鹿妻を支えてきた「ばっぱ」と呼ばれる元気で負けん気の強い“海の女子(おなご)”たちも、持ち前の明るさを失いかけていた。
しかし、ばっぱたちは「いつまでも落ち込んでばかりはいられない」と一念発起する。コミュニティセンターに集まって互いに悩みを語り励まし合いながら、ストラップや置物などオリジナルグッズを手作りし、その売り上げを復興資金に充てる「ばっぱコーポレーション」というグループを立ち上げたのだ。

2012年、新潟県で行われたイベントに出店した「ばっぱコーポレーション」のメンバーは、そこで地元のデザイン会社U・STYLEと出会う。グッズに込められた復興への強い思いに触れ、自分たちの専門分野で何か応援できることはないかと考えたU・STYLEは、彼女たちの心意気を象徴するようなシンボルをデザインする。モチーフは、拳を突き上げ「負げねど」と力強く宣言する鹿妻のばっぱの後ろ姿。悲しみや苦悩さえ笑い飛ばすばっぱたちの明るさとたくましさをかわいらしく表現したオリジナルの復興キャラクター「ばっぱ」の誕生だ。

U・STYLEはこのキャラクターをあしらったTシャツや手ぬぐいなどの復興支援商品を制作。売り上げの一部は「ばっぱコーポレーション」に振り込まれ、ばっぱたちが商品を販売したり地域の人たちと交流する際の費用に充てられる仕組みだ。さらに新潟の大橋洋食器、石川県金沢市の陶器メーカーNIKKOと協力しプレートやマグカップも発売。創業126年の大橋洋食器は、同じく津波の被害を受けた石巻市雄勝地区の名産「雄勝石」を使ったプレート(※1)を製造している企業で、U・STYLEがそのリーフレットをデザインした縁からコラボ商品が実現した。

「ばっぱ」デザインのグッズは、食器のほかにもコーヒーや石鹸、クッキーなどバラエティ豊か。どれも「ばっぱコーポレーション」の活動に賛同し名乗りを上げた企業や団体とのコラボ商品だ。たくさんの人々との出会いが、支援の輪となって広がっている。

食卓を明るく彩る“ばっぱ”たち

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「ばっぱ」の食器シリーズは全部で5種類(プレート2種、カップ3種)。中でも今回購入した「ばっぱがいっぱいプレート(20cm)」と「ばっぱがたくさんマグ(290cc)」は、商品名の通り小さな2色の「ばっぱ」が交互にちりばめられていて、見ているだけで楽しい。つややかで明るい白ベースの磁器は朝食やおやつにぴったり。壊れにくく扱いやすい強化磁器なので気軽に普段使いができるのもうれしい。

以前、岩手県大槌町の女性たちによる「大槌復興刺し子プロジェクト(※2)」を紹介したが、こうした被災者自らによる手仕事の品を買って使うことが確実な支援につながるし、日々の暮らしの中で彼らをより身近に感じ、復興への願いを共有することができると思う。

頼もしくもコミカルで愛らしい「ばっぱ」が賑やかに彩る朝のテーブル。「頑張れ、ばっぱ! 負けるな、ばっぱ!」とエールを送りつつ、いただきます!

※1. 雄勝石のプレートに関する記事はこちら
※2. 写真のランチョンマットも大槌復興刺し子プロジェクトのもの。同プロジェクトに関する記事はこちら

ライター:和泉朋樹

information

U・STYLE

WEBサイト
http://www.u-style-niigata.com/
住所
新潟市中央区沼垂西2-8-14
TEL
025-242-0651
FAX
025-242-0652

大橋洋食器

WEBサイト
http://www.ohashi-web.co.jp/
住所
新潟県新潟市中央区本町通8-1352
TEL
025-228-4941
FAX
025-229-5652
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