WEBでちょい旅 一厘録 ICHIRINROKU

奥会津天然炭酸の水(福島県)2014.04.25 /food

今から100年以上前の明治時代、日本から海外に「芸者印タンサン・ミネラル・ウォーター」という天然炭酸水が輸出されていました。奥会津の山奥に湧き出ていた炭酸水で、当時の日本のセレブたちにも人気でした。最近では価格帯も銘柄も選択肢が広がってぐっと庶民的な存在になっている炭酸水ですが、それでも私たちが普段飲むもののほとんどは輸入品です。国産の天然炭酸水、やはり輸入物とは違うのでしょうか。

国内で唯一ボトリングされている天然炭酸水

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「ガス入り」なんて言ってペリエやサンペレグリノを頼むのがかっこ良かった時代がかつてありました。そう、あの頃、炭酸水はまぎれもなくオシャンティーな飲み物でした。ちょっと気張って敷居の高いレストランに行って水を頼んだら「ガス入りもございますが?」とか言われて、「じゃじゃじゃじゃそのガガガガス入りで」なんてことになった日には、「きゃ~きゃ~ガスですってガスですって」と頭の中がガスだらけ。

すみません、最初から脱線しました。そんな時代もまた懐かしいなあという話です。炭酸水は今ではそんな気取った飲み物ではなくなりましたが、それでも輸入品というイメージがあります。そして私たちはなぜだか「輸入品ってステキ~」と思いがちなわけですが、炭酸水に関して言えばあながちカッコつけだけで輸入品を選んでいるわけではなく、日本で自然に湧出する炭酸水というのは実際とても少ないのです。現在ボトリングされ販売されているのは「芸者印タンサン・ミネラル・ウォーター」を現代に蘇らせた「奥会津天然炭酸の水」だけだそうです。

復活までに100年かかっちゃいました

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ところで、「芸者印タンサン・ミネラル・ウォーター」はその後どうして姿を消してしまったのでしょう。サイダーなどの供給量の安定している競合の存在もあったかもしれませんが、それより何より実は奥会津の山奥にある源泉から港まで運ばなければいけないというビジネスモデル(?)にやや無理があったようです。馬の背に水を載せて山の悪路を運ぶという流通システム(?)が休業に至った原因だとか。

湧出地である奥会津の金山町は、市街地から車で数時間という今も決して交通至便とは言えない場所。椎名誠がメガホンをとった映画「あひるのうたがきこえてくるよ」(1993)のロケ地というエピソードのあるまさに秘境です。そこに湧き出るのは軟水の炭酸水。ほとんどが硬水の海外の炭酸水に比べればミネラル含有量は少ないものの、「芸者印」以前には旧会津藩士が「太陽水」とネーミングして薬屋に卸していた「胃健冷鉱泉」です。
しかしボトリングするときにそうした天然の品質を維持するのはとても難しいことなのだそうです。そんなわけで、産地の地理的条件、ボトリング技術といった障壁を乗り越えて再び製品化されるまでになんやかやで100年。バブルのその昔の輸入炭酸水にひけをとらない価値を持つ炭酸水なのです。

ライター:菊池桂

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048-830-0011(平日9:00~17:00)
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