WEBでちょい旅 一厘録 ICHIRINROKU

バルサミィアップル(青森県)2013.04.05 /food

「え?これがリンゴ酢?」。ある日インターネットで見かけた濃褐色のリンゴ酢、その名も「バルサミィアップル」。ネーミングはもちろん、色やボトルデザインもイタリアのバルサミコ酢を想像させる。とあるテレビ番組で紹介された際、バニラアイスにかけて食べた出演者が「100円のアイスが500円になった!」と絶賛したとか。確かに高級バルサミコ酢をバニラアイスにかけて食べるとおいしいけど、テレビだから多少誇張してるんじゃない? と半信半疑のまま、真相を確かめるべく現物を取り寄せてみることに。

「100円のアイスが500円に」って本当?

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「お酢のつんとくるにおいが苦手」という人も多いと思うが、このバルサミィアップルにはそれがあまりなく、むしろ濃密で甘い、まさにBalsamico(芳香がある)の名にふさわしい香りがする。コンビニで売っているごく普通のバニラアイスにほんの少しかけて食べてみると、爽やかな酸味とコクが“ちょい足し”されて、まるでリンゴのジェラートのような味わいに変身した。出演者の方、疑ってすみませんでした。襟元の「ねじねじ」がいつもおしゃれですね。

アイスだけでなく、お肉のソテーや煮込みを作るときに少量入れるだけで風味がぐっと深まるし、フライパンで軽く煮詰めてミートソースに加えると、家庭で本格的なイタリアンの味が楽しめる。

濃厚さは手間ひまかけた証

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この今までにない新感覚のリンゴ酢を作ったのは、青森県弘前市の醸造会社カネショウ。本場イタリアはモデナ産の高級バルサミコ酢をイメージし、「青森の特産であるリンゴを使って作れないか」と十数年前から取り組んできたという。

醤油の醸造元として1912(大正元)年に創業したカネショウがリンゴ酢の製造を始めたのは1981(昭和56)年のこと。醤油や味噌づくりで培った醸造技術を生かしてさまざまなリンゴ酢を開発し、1994(平成6)年に現在の「すりおろし醸造」方式を採用した。原料はもちろん津軽産の完熟リンゴだけ。すり下ろしたリンゴを果肉ごとアルコール発酵させ、うまみや栄養を余すことなく凝縮。そうしてできたリンゴ酒を、醸造に適した津軽の冷涼な気候の中、低温で長時間かけて熟成させる。一般的なリンゴ酢の製法にはないこの工程を経ることで、柔らかいマイルドな味に仕上がるのだとか。

それだけでは終わらないのが、カネショウのリンゴ酢のすごいところ。ウイスキーやワインづくりに使う200本のオーク樽でさらに180日、バルサミィアップルに至ってはなんと1年以上の長期間にわたってじっくり寝かせるというから驚きだ。樽の中で静かに時を過ごすうちに酸味の角が取れ、リンゴのまろやかな風味が濃縮されていく。またウイスキーの製法と同じように、炭化させた樽の内側からバニラの主成分であるバニリンやポリフェノールが生成され、甘い香りとあの独特の深い色合いも加わる。

津軽の風土とおいしいリンゴ、そして手間ひまかけた製法で生まれたバルサミィアップル。混じりっけなし100%の濃厚熟成リンゴ酢は、“リンゴ生産日本一のまち”にふさわしい一品といえるだろう。

※今回使用した生パスタは、北海道・留萌の小麦「ルルロッソ」のフェットチーネです。「ルルロッソ」に関する記事はこちら

ライター:和泉朋樹

information

カネショウ

WEBサイト
http://www.ringosu.com/
住所
青森県平川市日沼富田30-12
TEL
0120-30-0231
FAX
0120-60-0236
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