WEBでちょい旅 一厘録 ICHIRINROKU

雁喰い豆(岩手県)2013.01.11 /food

かにかくに 渋民村は 恋しかり おもひでの山 おもひでの川
石川啄木が故郷を思って詠んだこの一首にある渋民村。現在の盛岡市玉山区が原産とされる東北在来の平たい黒豆を地元では雁喰い豆と呼びます。丹波黒と肩を並べる滋味と言われますが、「にちっ」と密度を感じる丹波黒に対して、この豆の持ち味は「ぽくぽく感」。東北のお正月や祝いの席でその煮豆は欠かせない一品です。丸い豆に比べると選別に手間がかかることから近年は生産量が減っており、新豆シーズンを逃すと入手困難なこともあるようです。

豆の旬

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豆の旬?乾物というイメージもあって、あまり旬を気にして食べることがないのが正直なところ。枝豆なら夏ですが、水に戻して使うあの豆にも旬があるのでしょうか。そういえば枝豆が大豆だと知ったのも、結構いい大人になってから。軽く衝撃でした。だったら枝豆が「豆」になるのはいったいいつ?調べてみました。そして豆にももちろん新豆シーズンというものがありました。

夏、はちきれそうだった枝豆。青々としていたそのさやは秋、どんどん色褪せ茶色くひからびていきます。晩秋になるとカラカラに干涸びたように見えるさやですが、その中に固く締まった豆が詰まっているのです。これを収穫してさらに乾燥させると豆はぱらぱらと簡単にさやからはずれるのだそうです。これが新豆です。

ですから新豆が出回るのは初冬。保存食でもある豆ですが、やはり新豆のおいしさは格別。豆腐も、新豆で作るこの時期が最もおいしいのだとか。おせちの黒豆の煮物も、豆が一番おいしい時期の料理なんですね。

雁がおいしさに惹かれて

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収穫シーズンである晩秋はちょうど雁の渡りの時期。繁殖シーズンをシベリアで過ごした雁が大挙して日本に飛来。次の繁殖に向けて栄養を蓄えながら東北各地で越冬します。豆をついばむその姿を見るにつけ、「この豆のうまさに、寄り道せずにいられなかったんだな」と、昔の人は豆泥棒を寛大に迎えていたのでしょう。

平たい豆の表面にある「雁がついばんだ」と言われる皺が特徴的な雁食い豆。端正な丸い姿の丹波黒からすると、それはいかにも素朴な風情。でもこんな謂れを知ると、どんな味なのかちょっと気になりますね。

ライター:菊池桂
写真提供:豆・雑穀の専門店 すずや

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